「第5回こども気象学会」を平成26年11月15日(日)に九州大学西新プラザで開催しました
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 今年度は、北九州市や福岡市などの小学校から全16作品の応募があり、9作品が優秀作品賞(調査研究賞:2作品、アイデア賞:2作品、審査員特別賞:2作品、こども気象学会賞:3作品)に、7作品が奨励賞に、それぞれ選ばれました。

 前半の『気象のお話し』には、今回、気象予報士や防災士としてご活躍されている坂本京子さんをお呼びして、気象予報士の様々な仕事についてのお話の他に、気象に関するクイズや実験を行っていただきました。
 後半の『作品発表会』には、今回優秀作品賞に受賞された9名の子供たちから、これまで取り組んできた研究の成果を発表してもらいました。
 以下、「第5回こども気象学会」開催模様について紹介します。

〜 隈 支部長の開会挨拶より 〜
 日本気象学会は、雲や台風、天気予報や地球の温暖化といった研究をする人たちが、研究発表や議論をしたりするところです。「こども気象学会」は、本物の気象学会と同じように、皆さんの研究の成果を持ち寄って発表してもらうために行っています。今回、台風や雲、天気図や紫外線など様々な研究作品が応募されましたので、今日は作品を見たり発表を聞いたりして勉強していってください。これからも身のまわりの自然で気づいたことをどんどんノートに書いて考えみることを積み重ねていくうちに次の研究が出来上がるかもしれません。来年のこども気象学会には、また作品を出してくださいね。
 今年は、日本から青色ダイオードの研究でノーベル物理学賞の受賞者がでて、最近は日本人のノーベル賞受賞者が多く出ていますが、若いころから粘り強く実験や観察を続けて結果を出した研究者が受賞されているように思います。竜巻の研究で世界的に有名な気象学者だった藤田哲也博士(北九州市出身)も子供のころに父親とともに近くの海岸の干潟を観察したことや、小倉中学(現小倉高校)時代に平尾台の鍾乳洞を探検・観察したことが科学を探求する原点だったと聞いています。今日出席いただいた保護者の皆さんや先生方には、ぜひきっかけ作りをお願いしたいと思います。ここにお集まりの皆さん、そして来年、再来年のこども気象学会に参加される皆さんから、将来の日本の科学技術の担い手が生まれることを祈っています。

1.気象のお話し


 今回は山口県を中心に気象予報士や防災士としてご活躍されている坂本京子さんにお越しいただき、「気象予報士のお仕事」についてお話やクイズ、雲の発生実験を行っていただきました。
 はじめに、気象予報士の仕事についてお話いただきました。“テレビやラジオでお天気を伝える人”という多くの人がイメージしている気象予報士の姿について、民間気象会社やNHK等の放送局でラジオの気象解説をしていた頃のスタジオ内の写真を見せていきながらお話してもらいました。
 他にも野球場やゴルフ場、スキー場、高速道路の管理会社などへ気象情報を提供することも気象予報士の大事な仕事であることもお話されました。
 私たちの身近なところに、必要としている情報を提供する“縁の下の力持ち”としての気象予報士の役割のお話に、会場の子供たちは興味を持って聴いていました。


 続いて、坂本さんのアイデアによる、これまで全国の気象観測所で観測した記録的な数字を使った“お天気数字クイズ”と、過去に流行語大賞候補としてノミネートされた“お天気流行語”クイズをそれぞれしてもらいました。はじめは静かだった会場もクイズが進行していくとともに、挙手をするお子さんが次第に増えていき、流行語クイズの場面では発言が飛び交い、笑いの場面もあるなど楽しい雰囲気となりました。


 講演の終わりには、雲発生実験用キャップをつけたペットボトルを使って、雲を発生される実験を会場の子供さんと一緒に壇上で行っていただきました。雲を作る実験にステージ上のこどもたちは夢中にキャップを押しながら空気を送り込んで雲作りに励みながらも楽しんでいました。


 実験の最後には、坂本さんからのサービスで雲の実験の“応用編”として、蒸気で白く曇った状態のペットボトルに再び圧力を加えていって蒸気がなくなっていく様子を見せながら、高気圧の下降流の中では雲がなくなって晴れていく様子を説明してもらいました。

2.作品展示・「思い出の日の天気図」コーナー


 全応募作品を会場ロビーにて並べて展示しました。開会前や休憩時間では多くの来場者が熱心に作品を鑑賞されていました。受付付近には「思い出の日の天気図」コーナーを出展しました。子供たちへ、はれるん(気象庁マスコットキャラクター)と一緒に撮った写真の入った誕生日の天気図をプレゼントしました。


3.作品発表会


 「こども気象学会」発表会の様子です。坂本京子さんの司会進行により、調査研究賞、アイデア賞、審査員特別賞、こども気象学会賞の順で作品発表が行われました。発表会では各受賞者から、研究を始めたきっかけから実験や観察、調べた内容と結果から分かったこと、発見したこと、まとめなどを発表してもらいました。
 短い発表時間内にもかかわらず、今回も、みなさん一人ひとり自分の言葉で堂々と発表してくれました。



 受賞者には発表のたびに、司会者の坂本さんからのインタビューのあと、各審査員(隈健一支部長、廣岡俊彦常任理事、永田統計理事)から、子供たちの熱心に取り組んできた研究成果とレベルの高い内容への称賛のコメントや、今後の取り組みへのアドバイスをしてもらいました。
 発表を終えた子どもたちは、審査員からのコメントへ真剣に耳を傾けていました。


 受賞者による発表が終わった後は、廣岡常任理事により「冬やその他の季節のお天気について.明後日やその先の天気がどこまで予測できるのか」など、今後の研究を進めていくにあたってのアドバイスを含めての全体の講評をしてもらいました。

〜 審査員・廣岡常任理事からの講評より 〜
 今年の夏は冷夏で、特に西日本の方で記録的な冷夏となりました。いつもの年と比べて曇りや雨の日が多く夏らしい空や雲が見えづらかったにもかかわらず、例年と同様に数人の方が雲や空を観察し研究されていて嬉しく思い、来年度に向けて今年と比較しながら同じように研究を続けてもらいたいと思います。日本は四季の変化が大きいので、各季節ごとに、例えば冬休みに冬特有現象を調べていくなど、研究する材料は私たちの身近なところにたくさんあります。他にも、毎日の新聞には数日先の天気予報も載っていますが、実際に数日先の予報がどの程度当たっていたかどうかを調べてみることが、予測可能性といった最先端の研究にも繋がるので、それを各季節ごとに調べていくのもよい研究になるのではと思います。
 私は気象庁の中にある異常気象検討会の委員を務めています。ここでは毎年全国からの研究者が集まり、夏と冬の異常気象の原因に関して話し合われます。今年は集中豪雨の多い年でしたが、調べてみるとここ10年間に空気中の水分量が一割程度増えていて、雨の降りやすい特定の場所に、明け方といった特定の時刻に集中豪雨の多くが発生していて、潜在的に起こりやすくなっていることが分かってきました。これら研究に携わる研究者は子供のころに体験した気象現象がきっかけで研究者となった方も多く、子供たちにはぜひいろんな現象に興味をもってもらって、将来は研究者として活躍され、気象のさまざまなメカニズムの解明が進んでいくことをわれわれ研究者は祈ってます。ご家族の方も子供たちの興味をぜひ気象のほうに向けていただければと思っています。本日はすばらしい発表ありがとうございました。

4.授賞式


 優秀作品賞および奨励賞の受賞者全員へ、隈支部長より賞状と記念品が授与されました。
 隈支部長より、受賞者一人ひとりには作品のテーマに沿った表彰文を読み上げていただきました。




5.記念撮影


 最後には、司会者の坂本さんと審査員、受賞者の記念撮影もあわせて行われました。


 今年度の「こども気象学会は」も参加者のみなさまからの好評のもと、幕を下ろしました。


 来場者方々からいただいたアンケートからは、昨年同様、子供たちの研究結果と立派な発表への驚きの意見など、数多くの賞賛の声をいただきました。
 そのほか、今回特別に作品を応募された小学校の担当教師からもコメントをいただき、来年度以降の「こども気象学会」開催に向けて大きな期待を寄せていただきました。

〜 ある教師からのコメント 〜
 子供たちへは、地道ながら毎日、百葉箱へ行って暑さや寒さを感じながら調べるよう指導しています。それを感じ色々考えながら調べてたことを今回発表してもらったと思っています。
 本日このような素晴らしい発表をしてくれた子供たちがたくさん育つと理科離れはなくなっていくだろうと思いますし、このような発表の場を提供していただいた関係者の皆様に感謝するとともに、今後も「こども気象学会」が長く続いてくことを望んでいます。

6.謝 辞


  本「こども気象学会」開催にあたって、福岡県教育委員会、福岡市教育委員会からご後援を賜り、作品の募集にあたっては福岡県小学校理科教育研究会からのご協力をいただきました。
 そのはか、各小学校の関係者や保護者の方など多くの方の協力のもと今年度の「こども気象学会」が無事執り行えたことに際して、この場を借りて御礼を申し上げます。